Grey Matter AR

カナダ国内外で活躍中のビジュアルアーティスト、 Karen Vanderborght による「Grey Matter AR」と題した個展がTirinity Square Video (410 Richmond St W, Suite 121) で3月21日(木)~28日(木)まで開催中だ。

会場には、壁に似たような50枚のプリントが展示してあるのみで、普通の展覧会とは少々異なる雰囲気だ。この個展の目的は作品を鑑賞するのではなく、作品から発信されるAR(拡張現実)を体験すること。

そのため、携帯にアプリのSnapChatをインストールして持参することをお勧めする。

気になるタイトルを見つけたら、まずSnapChatで撮影し、表示の指示に従ってアンロックすると自分の顔のまわりにさまざまな変化が起こる
AR体験をまわりの人と共有すると楽しさ倍増。音声でシニア達が語る名言も心に刻もう
ビジュアルアーティストのKaren。質問にも気軽に答えてくれる

3月21日のオープニングでもたくさんの人がARを体験

シニアの言葉は私達が生きる意味への理解を深めてくれると語るKarenは、21世紀の新しいシニア世代とのつながり方、コミュニティとのつながり方を提案している。

開催は3月28日まで。

<information>

https://www.facebook.com/events/1014524012090298/

RAW Toronto presents REFLECTS

3月7日(木)と8日(金)の夜、トロントの新進気鋭のアーティストがカレッジストリートのMob Clubに集結。アート、音楽、ファッションがミックスされたユニークなイベントが開催された。

アーティストに直接、作品について話が聞ける!
さまざまなミュージシャンによるパフォーマンスも。この後、ランウェイでファッションショーが行われた

<information>

https://www.rawartists.org/

https://rawartists.org/tombuisart

T.O Uncovered FOOD. ART. MUSIC festival

2月10日(日)、一夜限りのアートイベント「T.O Uncovered FOOD. ART. MUSIC festival」に雪の中、行ってきた。場所は、トロントのリトルイタリーと呼ばれるエリアにある「Rivial」。

ミニフードコートとクラブとアートフェアが一体となったようなこのイベントの会場は、音楽のバイブレーションにアーティスト達のエネルギーが溶け合って、来場者を熱く包む。

うれしいのは、アーティスト本人と話して、直接作品を購入できること。

ひと際ユニークな個性を放っていたのは、地元アーティストのTom Buis氏の作品群。ウッドボードやパネルに描かれているのはリアルとファンタジーが交錯する不思議な世界。オリジナリティあふれるキャラクターは人間でも動物でもない。自然の木目やボードの傷もアートに溶け込ませているのも興味深い。

Tom BuisのInstagram:tombuisart

会場で日本人を発見!

フォトグラファーのRyutaro Tsukata氏は大坂出身で、現在はトロントに滞在中とのこと。デジタルとフィルムの両方で日本の風景を紹介していた。

作品はローカル色が強く、隠れた日本の味わい深い風景を切り取っている。どこかレトロな雰囲気もあり、それが観る者に新鮮な感覚を与える作品だ。

トロントの写真もインスタグラムで紹介しているので、のぞいてみてほしい。

Ryutaro TsukataのInstagram:rt.573

シネマレビュー:Shoplifters(万引き家族)

Shoplifters(万引き家族)

公開日:2018年11月23日
ジャンル:犯罪、ドラマ
監督:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、樹木希林
上映時間:120分
公式サイト:https://gaga.ne.jp/manbiki-kazoku/

<あらすじ>

東京の下町、日雇い労働者の柴田治とクリーニング店で働く治の妻・信代は、息子の祥太、JKリフレ店で働く信代の妹の亜紀、治の母の初枝の5人で暮らしていた。一家は治と信代の給料、初枝の年金、治と祥太による万引きで生計を立てている。しかし、初枝は独居ということになっており、同居している家族がいることは秘密だった。ある冬の日、治は近所の団地の1階にある外廊下で、ひとりの女の子が震えているのを見つけ、見かねて連れて帰ってきてしまう。

<レビュー>

是枝裕和監督は、トロント国際映画祭では 1995年「幻の光」からの常連で、今や マスター部門参加となり、北米にもファンが多い。

常にドキュメンタリータッチのホームドラマがベースで、子役には台本を与えず、現場で口頭説明して本人の言葉で台詞を言ってもらうというのは有名な話だ。

さて、本作もホームドラマだが、少々複雑な設定だ。万引きと不正に受け取っている年金で生計を立てている5人家族は嘘だらけ。そこに一人の女の子が新たな家族として加わるという、実際にあった事件を基にして作られた物語だ。

この物語の複雑性を、ひょうひょうと演じるすべての俳優が素晴らしい。特に、一家で海に遊びに出かけ、独り砂浜で波と戯れる家族たちを見つめる樹木希林演じる初枝の無垢な瞳が美しい。樹木希林は入れ歯をはずして、このシーンに臨んだ。そして、本作が彼女の遺作となった。

社会の中でうまく生きられない人達がいる。悪いことって何なのだろう。社会が決めている正しいことって一体何なのだろうと考えさせられる。

取り調べを受ける安藤サクラ演じる信代の台詞が胸をつく。

悪者はいないというスタンスでいながらも、相変わらず明確な答えを示さない是枝監督は、オーディエンスに自由に考える機会を与えてくる。

2004年の「誰も知らない」以来、一番、是枝監督らしい作品に仕上がっている。

2018年、第71回カンヌ国際映画祭で最高賞のパルムドール受賞作品。

シネマレビュー:At Eternity’s Gate

The Eternity’s Gate

公開日:2018年11月23日
ジャンル:伝記、ドラマ
監督:ジュリアン・シュナーベル
出演:ウィレム・デフォー、ルパート・フレンド、オスカー・アイザック
上映時間:110分
公式サイト:https://www.ateternitysgate-film.com/

<あらすじ>

自然豊かなフランスの小さな村で、オランダ人画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、ユニークで斬新な色使いで自然を描く作品作りに没頭していた。精神疾患の苦しみ、フランス人画家ポール・ゴーギャンとの共同生活とその破綻などを通して、ファン・ゴッホは作品を超えた永遠とのつながりを考えるようになる。

<レビュー>

寒い、冷たい、疲労、混乱、苦悩、孤独、哀しみ…そんな感情に取りつかれた、つらい110分間であった。

しかし、本作が駄作かというと、その正反対である。スクリーンに投影されたフィンセント・ファン・ゴッホの人生の日々を生々しく痛いほど感じることができる作品だ。

風は強く吹き、そこにイーゼルを立てて絵を描くことさえ、苦行だったのだろう。

破れた靴下を履き続け、形が変形してしまったつぶれそうな靴で野原を歩き続け、土に触れて大地を感じる。それが彼の至福の時間だった。

そんなファン・ゴッホの日常をほぼハンディカメラでとらえており、そのため画面は常に揺れ続けている。揺れる画面を見続けるのが苦手な人は劇場ではなく、自宅などの小さめの画面で鑑賞することをお勧めする。

とはいえ、一見の価値ありの秀作だ。

ファン・ゴッホを演じたウィレム・デフォーは、ヴェネチア国際映画祭で最優秀賞男優賞を受賞。素晴らしい演技なので、この高い評価にもうなづける。

精神疾患のため誰とも真っ当な人間関係を築けないファン・ゴッホの唯一の理解者で支援者だった弟テオとの関係やポール・ゴーギャンとの交友関係、また当時の画壇がかなり保守的だったことも丁寧に描かれていて興味深い。

亡くなってから評価されるアーティストは少なくないが、ファン・ゴッホもその一人だ。一生貧しく暮らした。晩年には評価されていたとも言われているが、その言葉はどれだけ彼の残された片耳に届いていただろうか。

また、彼の死についても諸説がある。本作では大胆な推測に基づいてその死に様が描かれているのだが、そこにシュナーベル監督の強いこだわりが感じられる。

シネマレビュー:The Mule

The Mule

公開日:2018年12月14日
ジャンル:ドラマ
監督:クリント・イーストウッド
キャスト:クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー、ローレンス・フィッシュバーン
上映時間:116分
公式サイト:http://www.themulefilm.net/

<あらすじ>

園芸業を営むアール・ストーンはいつも仕事や仲間を優先し、家族をないがしろにして生きてきた。しかし、事業に失敗し、家は差し押さえられ、年老いた彼は窮地に陥ってしまう。そんな時、孫の婚約パーティで会った男から、車の運転をするだけで報酬がもらえる仕事を紹介される。こうして彼は80代にしてメキシコの麻薬カルテルの運び屋となった。

<レビュー>

クリント・イーストウッドの監督・主演作としては、2008年の「グラン・トリノ」以来10年ぶりの最新作だ。映画出演も2012年の「人生の特等席(Trouble with the Curve)以来となる。

本作は、80代でシナロア・カルテルの麻薬の運び屋となった実在の退役軍人、レオ・シャープの事件に基づいた物語だ。

家の外では誰にでも良い顔をし、家族のことには見向きもしない典型的な仕事人間。そんな男が年老いて事業に失敗し、どこにも行く場所がなく窮地に陥った時に、麻薬の運び屋という仕事に出会ってしまう。

物語はすべて予想通りに進行していく。名優クリント・イーストウッド演じるアールが、警官や麻薬探知犬をうまく巻くところなどコミカルでさえあった。運び屋として最高齢にして最高の仕事をしてしまった彼は、カルテルのボスからもすっかり気に入られるが、皮肉にもそこから歯車が狂いだす。

王道的なストーリー展開に、劇場で見ていた時は少々単調にさえ感じた。が、しかし、後になって、この作品の凄さを思い知らされることとなった。

時間が経つほどに、じわりじわりといろいろなシーンが頭の中に蘇ってきて、そのたびに新たな感動に包まれるのだ。

一つひとつのシーンや台詞が精巧に考え抜かれ、選び抜かれているからなのだろうか。本当に隙のない、完成度の極めて高い作品と言わざるをえない。

それにしても、かつてこの作品ほどかっこ悪いクリント・イーストウッドがいただろうか。老いぼれて背筋が丸まり、携帯電話を使ったことがなく、テキストが何かを知らず、若者相手に虚勢をはって見せ、強い相手にはすぐにヘコヘコする。言うこと成すことすべて見事なまでに間違いだらけなのだ。当然ながら、このダメ人間ぶりにかつてのダーティハリーの面影は微塵もない。

また、ブラッドリー・クーパーら警察側の人間達がアール達と交錯していくタイミングも絶妙だ。

イーストウッドは積極的に作品出演はしないと語っているようだが、このまま引退などせずに、まだまだ素晴らしい監督作品や演技を見せてくれることを願うばかりだ。