シネマレビュー:The Shape of Water

The Shape of Water

公開日:2017年12月8日
ジャンル:アドベンチャー、ドラマ、ファンタジー
監督:ギレルモ・デル・トロ
キャスト:サリー・ホーキンス、マイケル・シャノン、リチャード・ジェンキンス
上映時間:124分
公式サイト:http://www.foxsearchlight.com/theshapeofwater/

<あらすじ>

舞台は1960年代のアメリカ。ある日、政府の秘密研究施設に魚人が運び込まれてきた。清掃員のイライザとゼルダは魚人が飼われている水槽がある部屋の清掃担当を任命される。発話障害の孤独な女性イライザは魚人と徐々に交流を深めていくのだが…。

<レビュー>

オープニングから度肝を抜かれ、すべてのシーンが美しく、ギレルモ・デル・トロ監督らしい陰鬱で耽美な独特の世界観を最初から最後まで堪能できる作品だ。

ビクトリア調の家具、映りの悪い巨大な家具調テレビ、ガラス製の鍋の沸騰した湯の中で踊る卵たち、派手な色のキャデラック、劇場型映画館など、登場する部屋、ファッション、小物にいたる隅々にまで味わい深いこだわりを感じさせ、何度も見て新たな発見をしたくなる。

物語は冷戦時代のアメリカで、ノスタルジックで平和な貧しさが漂う。古びた広いアパートは湿気でいっぱいだ。しかし、現代にあふれる使い捨てのものが一切登場せず、人間がより人間らしい。

猫好きにはつらいシーンがある。これは猫と魚の逆説的メタファーなのかもしれない(と思うことにしよう、涙)。

世の中は今でも強い者と弱い者、上の者と下の者、そんなふうに分けられている。しかし、そういうことが揺るぎない愛の前ではなんとちっぽけなことか。

奇才デル・トロ。どんでん返しの終わり方も見事である。まさに大人向けのファンタジー。

観終わって映画館を出た途端、ゆで卵とサンドイッチが食べたくなった。魚人にはあのゆで卵はどんな味がしたのだろうか。