5月雪の後の葉桜

新型コロナウイルスで非常事態が続く中、自然だけは季節の移り変わりと共に息づき、トロントでも桜が開花した、と思いきや5月9日(土)はまさかの雪。寒さで桜もすっかりやられているだろうと思っていた。

13日(水)、急を要する用事で外出。公共交通機関は乗らず、徒歩1時間の道のりの途中、トロント大学のキャンパス内を通ったところ、あの雪にもめげず、満開だった桜が葉桜に変わるところに出会った。暴風にあっても落ちない桜の花々が今日の青空の下で誇らしげに揺れている。

強いなと思った。

帰途の公園の入り口では、誰かがチョークで書いた食品加工者やドラッグストアのスタッフへの感謝メッセージを見つけた。

“THANK YOU ESSENTIAL SERVICES”

カナダと新型コロナウイルス


カナダ国内の各州の感染者数を表す地図
https://www.canada.ca/en/public-health/services/diseases/2019-novel-coronavirus-infection.html より引用

4月3日、世界の新型コロナウイルス感染者数が100万人に達した。カナダは4月2日に感染者数が1万人を超え、4月中に5万人を超えた。亡くなった方のほぼ半数が高齢者で、特に長期介護施設での集団感染と人手不足が大きな問題となっており、ケベック州とオンタリオ州の長期介護施設には医療訓練を受けた軍のチームが派遣され、支援を行っている。

ケベック州とオンタリオ州の感染者数が圧倒的に多いが、この2州を含めほとんどの州がピークに達したと見られる。そのため、各州ではビジネス再開のプランが検討され始めた。

COVID-19アプリができ、ウェビナーなどオンラインでのイベントが急速に一般化し、会社のスタッフや友人同士のZoomやSkypeなどを使ったバーチャル・ミーティングも日常生活に浸透してきた。運動のための外出は認められているものの、多くの公園は人が集まらないよう閉鎖されている。スーパーやドラッグストアは入店に人数制限をもうけているため、店の外には順番を待つ人々の列が見られる。店外も店内も2メートルのソーシャルディスタンスが遵守されている。最前線で働く医療従事者などには優先的に店内に入れるよう配慮されている。 もともとカード社会ではあったが、 レジでは直接的な接触を避けるため、ほとんどの人がクレジットカードで支払っている。スーパーやドラッグストアに設置されている買い物カゴは常に消毒されていて、以前の薄汚れてシミだらけ、時には得体のしれないベタベタしたものがついていたカゴが今や見違えるようにピカピカになっている。スーパーでは朝に高齢者用の時間帯をもうけているところもある。外出自粛が続く中、各メディアはメンタルヘルスのケアも忘れないようにと呼びかけている。トロントのハイパークも桜を見に出かける人が出ないように閉鎖する措置がとられた。侵入した人には750ドルの罰金が科される。そのかわりにトロント市のウェブサイトで桜の開花をライブ配信する。トロント市のジョン・トーリー市長は「再び開園できる日が一日も早く来るよう、今はルールを守ってほしい」と市民に呼びかけた。

トロント市のホームページ(ハイパーク)
https://www.toronto.ca/explore-enjoy/festivals-events/cherry-blossoms/

シネマレビュー:At Eternity’s Gate

The Eternity’s Gate

公開日:2018年11月23日
ジャンル:伝記、ドラマ
監督:ジュリアン・シュナーベル
出演:ウィレム・デフォー、ルパート・フレンド、オスカー・アイザック
上映時間:110分
公式サイト:https://www.ateternitysgate-film.com/

<あらすじ>

自然豊かなフランスの小さな村で、オランダ人画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、ユニークで斬新な色使いで自然を描く作品作りに没頭していた。精神疾患の苦しみ、フランス人画家ポール・ゴーギャンとの共同生活とその破綻などを通して、ファン・ゴッホは作品を超えた永遠とのつながりを考えるようになる。

<レビュー>

寒い、冷たい、疲労、混乱、苦悩、孤独、哀しみ…そんな感情に取りつかれた、つらい110分間であった。

しかし、本作が駄作かというと、その正反対である。スクリーンに投影されたフィンセント・ファン・ゴッホの人生の日々を生々しく痛いほど感じることができる作品だ。

風は強く吹き、そこにイーゼルを立てて絵を描くことさえ、苦行だったのだろう。

破れた靴下を履き続け、形が変形してしまったつぶれそうな靴で野原を歩き続け、土に触れて大地を感じる。それが彼の至福の時間だった。

そんなファン・ゴッホの日常をほぼハンディカメラでとらえており、そのため画面は常に揺れ続けている。揺れる画面を見続けるのが苦手な人は劇場ではなく、自宅などの小さめの画面で鑑賞することをお勧めする。

とはいえ、一見の価値ありの秀作だ。

ファン・ゴッホを演じたウィレム・デフォーは、ヴェネチア国際映画祭で最優秀賞男優賞を受賞。素晴らしい演技なので、この高い評価にもうなづける。

精神疾患のため誰とも真っ当な人間関係を築けないファン・ゴッホの唯一の理解者で支援者だった弟テオとの関係やポール・ゴーギャンとの交友関係、また当時の画壇がかなり保守的だったことも丁寧に描かれていて興味深い。

亡くなってから評価されるアーティストは少なくないが、ファン・ゴッホもその一人だ。一生貧しく暮らした。晩年には評価されていたとも言われているが、その言葉はどれだけ彼の残された片耳に届いていただろうか。

また、彼の死についても諸説がある。本作では大胆な推測に基づいてその死に様が描かれているのだが、そこにシュナーベル監督の強いこだわりが感じられる。

秋色のトロント

トロント大学周辺が秋色に染まっています。

落ち葉も朝夕の冷え込みを寄り添って耐え、、、

リスも食べ物の確保に余念がありません。