シネマレビュー:Bohemian Rhapsody

Bohemian Rhapsody

公開日:2018年10月30日
ジャンル:伝記、ドラマ、ミュージック
監督:ブライアン・シンガー
キャスト:ラミ・マレック、ルーシー・ボイントン、グウィリム・リー
上映時間:134分
公式サイト:https://www.foxmovies.com/movies/bohemian-rhapsody

<あらすじ>

1970年代初頭、ロンドンに住むインド系移民出身のファルーク・バルサラは、自分の音楽を表現できる場所を探すため、ライブ演奏を聞き歩いていた。気に入っていたバンド「スマイル」に声をかけ、自分をボーカルにしないかと持ち掛ける。バルサラはそのバンドの名前を「クイーン」に改名、自らを「フレディ・マーキュリー」と名乗り、ブティックの店員メアリーと同棲生活をしながら、成功への道を辿り始めるが、、、。

<レビュー>

1973年にデビューしたイギリスのロックバンド「クイーン」。ロックの黄金時代を築いたバンドの一つであり、その偉業は今でも楽曲が聞き継がれていることでもうなづける。

しかし、1991年11月23日にボーカルのフレディ・マーキュリーが自らHIVポジティブでエイズ患者である声明を発表し、その翌日、この世を去ってしまった。45歳という若さのロックスターの突然の死は世界中に衝撃を与えた。 2001年にはロックの殿堂入りを果たしたクイーンのアルバムなどのトータルセールスは2億枚ともいわれている。

本作は、クイーンのボーカル、フレディ・マーキュリーがブライアン・メイとロジャー・テイラーのバンド「スマイル」にボーカルとして加入し、紆余曲折を経て、1985年に開催された伝説のチャリティコンサート「バンドエイド」に出演するまでを描いた作品だ。

この作品の見どころは、やはりラミ・マレックの演技力の一言に尽きる。ささいなしぐさや表情、ステージングまで、まるでフレディが憑依したかのようだ。顔や体型がそこまで似ていないのに、スクリーンの中のラミはフレディそのものと言っても過言ではない。

何度も否定されながらも自分の音楽を追求する真摯な姿勢、メアリーとの関係、厳格な父親や家族との関係、バンドで成功しながらも満たされない、底なしに広がる暗闇のような孤独感、 HIVポジティブと診断され、エイズを発症した苦悩。 そんなフレディの姿と同時に、ラジオが テレビに凌駕され、レコードがCDなどに変わり、メディアが権力を持ち始めた、 音楽シーンの変遷も浮き彫りにしている。

バンドが「この曲をA面にしないならレコード会社との契約を切る」などといった主張は、今の世の中ではありえない。

それにしても、1975年にリリースされた楽曲「ボヘミアン・ラプソディ」が時代を超えて生き続ける名曲となっていることに改めて感動する。当時はアルバム「オペラ座の夜」のB面の最後から二番目に収録されていた。オペラとロックの融合、そして6分という長い曲は当時、批評家から酷評されたというが、今でも多くのリスナーを魅了している。この映画を見て、クイーンのファンになる若者が出てきても不思議ではないとさえ思える。

最近、ミュージシャンの友人がこんなことを言っていた。

「ミュージシャンは体を酷使するし、地道な練習や勉強も相当必要な仕事。だから、今時はなりたがる人が少ないんだよ」

だからこそ、人はミュージシャンが命を削るようにして生み出すサウンドやステージの姿を見て感動する。本作を見て、あらためてそう確信した。