オンタリオ美術館で2021年10月6日から開催中の「PIcasso: Painting The Blue Period」に行ってきた。
若くして才能を開花させ、その一生を芸術に捧げたパブロ・ピカソは、作風をコロコロ大きく変える作家としても有名だ。その中でも、当時、もっとも商業的に成功しなかったのがこの「青の時代」の作品群。抽象画家としてのイメージが強い彼だが、親友の自殺をきっかけに、世の中の底辺で生きる人々を真摯に見つめて描いた青春期の作品には、華やかな時代の作品とは対局的な暗澹で生々しいエネルギーを感じる。
本展覧会では、たとえばポスターにも使われている「The Blue Room」で描かれている室内に飾られていた絵画作品のリアル版の展示があったり、ピカソが影響を受けたロダンやロートレック作品の展示があったりと、鑑賞者にとって奥行き感のある内容となっている。
ウイークデーの昼前くらいに出かけたので来場者も少なめ。ゆったり鑑賞できた。
1903年の作品「The Soup」は、「青の時代」では数少ないやや明るめの作品。
1904年の作品「The Frugal Repast」。このエッチング作品は資金作りのために製作したとか。弱冠23歳のピカソのこの成熟度と多彩な芸術的才能には心底度肝を抜かれる。
若さゆえの研ぎ澄まされた感性で孤独と陰鬱な作品を描き続けた「青の時代」から、「薔薇色の時代」へ。色のトーンが一変し、題材も女性のヌードが多い。
その後は、キュビスム、新古典主義、シュルレアリスムの各時代へと駆け上がっていく。
ところで、「青の時代」の作品の中にはキャンバスの下に別の作品が描かれているものがあることが明らかになっており、本展覧会でもテクノロジーを駆使して解明していく様子をビデオで紹介していた。確かに興味深いが、ピカソにとってこれが明るみに出るのは不本意ではあるまいか。
2022年1月16日まで開催中。入場には予約が必要。詳細は以下のサイトをご覧ください。
https://ago.ca/exhibitions/picasso-painting-blue-period